読み切りコラム

<旅が学校だった>
「一人で歩く旅」が育んだ自信と好奇心、そして問題解決力

更新日 : 2017/10/11

地球の歩き方創業者
西川 敏晴(にしかわ・としはる)

1971年、㈱ダイヤモンド・ビッグ社に入社。「就職ガイド」事業部を経て1974年DST( ダイヤモンド・スチューデント・ツアー)担当となる。旅行業の傍ら1979年に『地球の歩き方』を創刊。地球の歩き方編集長、社長、会長を歴任。現在はトラベル・ジャーナリスト、NPO「季語と歳時記の会」副代表、「大岡信研究会」会長。


海外旅行ガイドと言えば誰もが思い浮かべる『地球の歩き方』。その生みの親の一人、西川敏晴さんは旅の魅力を知りつくした旅マイスターだ。西川さんは旅で何を学び、どう変わったのか。そして家族旅行をより楽しむためのアドバイスとは。穏やかな口調ながら、まるで今も旅する青年のように、時折目を輝かせ語ってくれた。

大学卒業を前に実行した ユーラシア一周一人旅

 そもそもの始まりは中学生のとき父の書棚で見つけた『何でも見てやろう』(小田実著)という一冊の本でした。欧米・アジア22カ国を一人で渡り歩いた作家の体験記なのですが、これを一気に読んだ時から「いつか自分も」という思いを胸に秘めていたのです。大学生の時にちょうどそういう旅をした人に出会って刺激を受けましたね。折よく卒業も早く決まり、残り3ヶ月半ありましたので「よし今だ!」と旅に出たのです。

 まず横浜から船でナホトカに渡り、シベリア鉄道でヨーロッパに向かいました。当時ヨーロッパへ行くにはそれが一番安い方法でした。五木寛之の小説『青年は荒野を目指す』と同じルート。日本人旅行者はまだまだ少なかった時代でしたが、ヨーロッパに行くと、アメリカ人のバックパッカーがすごく多かったですね。そのアメリカ人の若者たちの多くが手にしていた、一冊の本がありました。アーサー・フロンマーの『ヨーロッパ一日5ドルの旅(EUROPE ON $5 A DAY)』というガイドブックです。

 各地の安い食堂やホテルの情報が満載の、節約旅行のバイブルでした。1ドル360円の時代でも5ドルは相当安いですよね。その本を手にした彼らはみなヨーロッパ諸国を回り終えると、その中でヒッピーの聖地、ネパールのカトマンズやインドをめざして旅して行く人たちがいることを知りました。しかも陸路を辿り……。それなら私も南周りで帰ろうと思いました。ギリシャからトルコ、イラン、アフガニスタン、パキスタン、そしてインド。最後はバンコクと香港に一泊ずつして、帰ってきたのが4月1日の午前1時です。当日が入社式でしたからもちろん遅刻です(笑)。ロングヘアのまま出社し、周りからは大ひんしゅく、後々まで言われましたね。入社後2週間の研修期間は呆然として、なかなか社会復帰できませんでした。旅によって大きな価値観の転換が行われ、その新しい衣服に自分の身体を馴染ませるための期間だったから。

 旅から学んだことは多く、また大きいものでした。まず欧米の若者を見て思ったのはみな自立しているということ。自分の意見を持ち、自分の言葉で話す彼らがずいぶん大人に見えました。そういう旅人たちと交流する中で、自分の考えを持つことの必要性、そしてそれを伝えるためのコミュニケーション能力や語学力をつけなければと痛感しました。また、世界には色々な人、色々な価値観があるということを実感として得ることもできました。今の時代、「多様性」という言葉がよく使われていますよね。それを今ここにあるものとして、肌で感じることができたのです。この旅で得た実感や自信は、いま振り返ると社会人になってからの行動を決定づけるものでした。

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