読み切りコラム

これからの教養-自分の幸せを自身で考えられる力

更新日 : 2017/06/07

 進路や将来の選択肢は、知らず知らずのうちに、周囲の環境によって狭まりがちです。親の職業や、育った地域や、通っている学校によって、自然と「世間並みの進路選択」が作られてしまいます。親や学校の先生、塾の先生のすすめに従って、周りの友達の決断に流されて。

 そもそも「進路指導」というのは矛盾を孕んだコンセプトです。先生になるための指導を受けた先生が、先生以外の職になるために最善の方法を指導することは果たしてできるでしょうか。また、親御さんは、自分の就いている職業以外の職業を説明できるでしょうか。そうした指導の不十分さがあるため、いつのまにか周囲の価値観に流されてなんとなく「受験をして」「大学に行く」ことが当たり前となり、将来自分がどうありたいか目的が持てなかったり、大学で何を勉強して、将来どんな道を歩みたいか、イメージが出来ないといった思いを抱く学生が多いのではないでしょうか。

 そして、これまでの自身のことを振り返ることもなく、ただ無思考、無批判に進路選択をしていった結果が今の日本社会に表れていると僕は思います。第二次世界大戦の軍部の失敗から東芝の粉飾問題に至るまで、日本社会の根本にはきちんと自分自身で責任を持って決断を下さない“傾向があるのではないかと考えます。巷では問題になっているはずの貧困や、移民をめぐる論争、障碍者への支援、性的少数者への配慮といった社会問題が解決されないのは、こうした他人事な姿勢からくるのではないかと考えます。

小林直貴
筑波大附属駒場高校出身、東京大学法学部在学中。HLAB 2017 学生代表。 幼稚園小中高とサッカーをプレイ。高校時代は部活の部長と体育祭の実行委員を務める。大学では政治と法律を学び、9月よりカナダの大学に交換留学予定。好きな食べ物はシューマイ、好きなお笑い芸人はサンドウィッチマン。HLABのウェブサイトはこちら。

これからの社会に求められるのは、自分の幸せを自身で考えられる力

 今、僕は東京大学で勉強している身ですが、こうしたことを感じることはいくつかの場面であります。「おそらく給料が良くて、安定した職につけると言われているから資格試験のために塾に通っている」、「とりあえず東大に入れて将来もある程度安泰だろうから、大学では遊びたい」といったように。従来通り、東大にいれば無条件で安定した生活を「とりあえず」送れる、という固定観念のもと、きちんと物事を考えずにその場限りの決断をしている人が多いように感じます。90年代までは一流大学に行き、一流企業に行くことが“善い”ことで、一度そのコースに乗ってしまえばそこからドロップアウトすることは中々ない社会でした。だからこそ、限られた選択肢の中で進路について困ることはありませんでした。

 しかし、ほとんどの人が最低限の衣食住に困ることがなくなり、社会が成熟していくにつれ、また海外との繋がりの増加によって今までの価値観や幸福観が多元化した今の世の中で、果たして同じ考えが通用するのでしょうか。今や教育に対する価値観は過去とは全く異なったものになっていると日々感じています。東大が一番で、筑駒や灘、桜蔭が一番といった偏差値に基づく価値づけは、全く持って崩れていると考えます。東大にいても、「東大生」らしからぬ学生は山ほどいますし、一方で他大学であっても、優秀で他人に配慮のある学生はたくさん目にします。これは後述のHLABでの活動の中で他大学の大学生と交流する中で日々ひしひしと痛感させられます。

 こうした中で改めて大事になってくるのは、身近なところに存在する多様性なのではないでしょうか。人生の転機となる進路選択という段階で、短絡的に海外大学に進学するか、日本の大学にするかといったような単純な二項対立で物事を捉えるのではなく、普段交わるはずのない人たちと交流する中で、日本の大学で英語を学ぶ、休学して海外に行く、ダブルディグリープログラムに参加する、学部は日本で学んでから大学院で海外に行くなどと複眼的にグラデーションを持って物事を捉え直せるのではないでしょうか。そうした中で、様々な学問に触れ、様々な体験を通して、自分にとって幸せだと感じることはなんなのか、やりたいことはなんなのか、きちんと考えておくことが将来において必ず役に立つはずです。

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