偉人たちの少年時代
―夏目漱石

近代日本の文豪・夏目漱石は、今からちょうど150年前の明治元年(1867年)に生まれ、100年前の明治5年(1916年)に49歳で他界した。1世紀も前の小説家ながら、その作品は今もなお日本人の心をとらえ、欧米でも再評価が進んでいる。漱石が傑作を生み出すことができたのは、幼少期の家庭環境と漢文学に対する特別な興味が影響していると言われている。それは一体どのようなものだったのか、漱石の生い立ちと少年時代にスポットを当ててみた。
加嶋径子(かしま・みちこ)。広告代理店、朝日新聞専属制作会社を経てライターとして従事。新聞、雑誌、Webを媒体とした教育機関や企業のPRをはじめ、学校案内、各種広報誌・情報誌等の企画制作に携わる。
2度も養子に出された幼少期
夏目漱石(本名、金之助)は、明治元年(1867年)1月5日、名門武士の父・夏目直克と母・ちゑ(千枝)の5男3女の末子として、江戸牛込馬場下町(現在、新宿区喜久井町1番地)に生まれた。千枝の体が弱かったため、生後間もなく貧しい古道具屋の家に養子に出されるが、姉によって実家に連れ戻される。その後、またもや養子に出されるも、養父母の離婚によって9歳から生家で暮らし始めることになる。良家に生まれたのにも関わらず、複雑な幼少期を過ごした結果、孤独感から自立心を育んだようだ。