立正大学付属立正中学校
共学校

R- プログラム発表の様子。発表者だけでなく、聞く側も真剣。与えらえた記事だけでなく、発表の内容に関して200字で意見を書くこともある
PISA型読解力の育成をめざして
国語教育とR‐プログラムで学力が上昇
[ この記事のポイント ]
1.論理的な表現力と表・グラフの読み取りを重視する国語教育。
2.机上の学びを社会につなげる『R -プログラム』。
3.「読む・書く・話す・聞く」力が、教科学習を深化させる。
日本の課題がさらに浮き彫りになった〈PISA2018〉
昨年末、PISA2018(学習到達度調査)の結果が公表されると再び議論が巻き起こった。「読解力」における日本の順位が、8位から15位へと大きく後退したからだ。PISA型読解力とは、文章および図表を幅広く読み、実生活に活用する力である。「日本人は表やグラフが加わった文章がとにかく苦手」と話すのは、国語科の加藤咲佳教諭。入学の時点で図表を毛嫌いする生徒は非常に多いという。また文科省は「自由記述形式の問題において、自分の考えを他者に伝わるよう根拠を示して説明することに課題がある」と分析。つまり、論理的表現力の不足だ。小学校の教員免許も持つ今田正利校長補佐は「およそ30年前、国語の指導要領には〝文章を味わう〟ばかりで、例えば算数の〝四則計算ができるようになる〟というような明確な目標がなかった。文学志向が強く、その歪みが今現れているのでは」と指摘する。
国際標準に比して日本の教育課題が浮き彫りになった今回の結果。しかし立正では以前より、論理的表現力の育成および図表の読み取りに力を注いできた。土台となる取り組みが中1の国語だ。独自に編纂したテキスト『ロジカル国語表現』を用い、前半は日本語の文法や構造を一から見直し、具体と抽象の使い分けなど基本的な文章作法を徹底的に学ぶ。後半は表やグラフなど資料の読み取りが中心だ。「導入段階では生徒の苦手意識を取り除くことが何より重要」と加藤教諭。身近で平易なテーマに引き寄せて、生徒の理解を促している。
中2以降は難易度を上げた『論理エンジン』を使用。最終的には結論・根拠・予想される反論などを交えながら、自分の意見に説得性を持たせる論理的な表現技法を体得する。検定教科書を使った授業との割合は半々程度だ。「物語と論理表現、どちらも等しく重要」と、加藤教諭はその信念を力強く語る。
そして立正教育を語る上で欠かせない取り組みが『R-プログラム』だ。「Research( 調べる)」「Read( 読み取る)」「Report( 伝える)」という社会で必要な3大スキルを育むため、8年前に導入された。柱となる活動が中1~高1で行う『コラムリーディング』だ。これは週に2回、ショートホームルームの時間に新聞や雑誌のコラムを読み、感想や意見を作文にまとめ発表するというもの。テーマは時事問題を始め、政治、科学、資料を交えたデータ分析など実に様々。全教科をまたぐ総勢14名の教員で選定し、テーマに偏りが出ないよう配慮している。日頃からあらゆる分野の情報に触れることで、社会への興味・関心を呼び起こすことが目的だ。
実際にフィールドワークへ発展する機会もある。中3「関西修学旅行」の前には『訪日外国人旅行者』に関するコラムを読み、観光地の現状や課題について考えた。そして現地でなされている外国人向けの工夫や配慮を探し出し、後日発表する機会を設けたのだ。コラムリーディングは教室と社会をつなぐ架け橋にもなっている。そしてもう一つのこだわりは、作文に対して一切の評価をしないこと。何事に対しても自分の意見を持ち、それを自由に表現することを楽しんでほしいからだ。「作文への抵抗感は徐々に弱まり、2学期後半ともなれば大抵の生徒が自分の意見を堂々と発表できるようになる」と加藤教諭。学年が上がるにつれグループ討論やディベートも盛り込み、4年をかけて「読む・書く・話す・聞く」力を徹底的に鍛え上げていく。