鷗友学園女子中学校
女子校

オリジナルの実験書を用いて独自のカリキュラムを展開。科学する心を育む
実験・観察から〝自分たちの法則〟を導く
〝小さな科学者〟を育む鷗友流の授業
[ この記事のポイント ]
1.女子の発達段階に対応した独自の理科カリキュラム。
2.「生きているってすごい!」生命の尊重を育む生物の実験授業。
3.テーマも方法も、実験の詳細は自ら設定。科学者の研究姿勢を育む。
見えるものから見えないものへ鷗友の理科は、独自のカリキュラム
中1『生物』の実験授業。理科室はリラックスムードが漂い、白衣を着た生徒たちの表情も明るい。この日のテーマは『玉ねぎとヒトの細胞を観察する』。楽しそうに手を動かしつつも、顕微鏡を覗き込むと表情が一変。真剣な眼差しが印象的。徐々に「見えた!」「きれい!」という声が聞こえてくる。レンズの先には染色液に染まった細胞が整然と並んでいる。「特に中1の段階では、感激や好奇心を何より大切にしています」と話すのは理科の若井由佳教諭。「生徒たちは入試を経て豊富な知識を持っていますが、実体験が伴っていない。手で触ったり匂いを嗅いだり、五感で感じる実験を多く取り入れています」。生物の目標は「卒業時に全員が『生きているだけですごい』という事実を心で実感すること」。生命の尊重はすべての活動の土台となるべき精神だ。その意味で、生物教育は倫理観の育成という側面も持っている。
中1理科の授業は週3時間。2時間続きの実験授業をベースに、その後の講義で知識の肉づけを行う。一連の過程で身につけるのは科学的思考力。鷗友独自の『実験書』を用い、目的・方法・結果・考察・感想までを丁寧に記録しながら、その作法を体得していく。
鷗友独自の取り組みはカリキュラムを見れば一目瞭然。中1の履修課程は生物のみ。この1年間で高1の内容までをカバーする。そのため物化生地の混ざった一般的なテキストではなく、生物を系統的に学ぶ専門教科書を使用。一年間集中して学ぶことで理解の効率化を図っている。
その後、中2・3年で化学・物理・地学を学び、再び生物に取り組むのは高1という流れ。その理由を若井教諭は「生物のように目で見て触れる〝具体的な内容〟から始める方が、女子に合っているから」と話す。一般に抽象より具体が得意とされる女性脳、経験上若井教諭もこれに同意する。「中2以降で徐々に目に見えない現象に取り組みますが、例えば化学の『BTB液』や物理の『物体の運動』のように、やはり目に見えるものから徐々にステップアップしていきます」。女子の発達過程に合わせたカリキュラムを組むことで、女子の〝理系嫌い〟は最大限食い止められる。実際、高2の文理選択では半数が理系を選択し、さらにその3分の2が女子に敬遠されがちな物理を選択。鷗友理科教育の成果の一端が見える。