玉川学園中学部
共学校

中学3年の学びの技ポスターセッションの様子。教育関係者や教員、保護者を前に中間発表としてプレゼンテーションを行い論文作成につなげていく
6年間にわたって継続する探究型学習で
生涯学び続ける意欲と研究スキルを習得
[ この記事のポイント ]
1.「学びの技」は研究スキルの習得だけでなく、キャリア教育にも。
2.批判的思考力や多角的思考力の育成も重視する「自由研究」。
3.自分の興味を追究することで、大きく飛躍する手がかりを得る。
身近な物事から世界の問題へ中学では、視野を大きく広げる
玉川学園が掲げてきた、教えられるよりも自ら学び取る「自学自律」の姿勢を具現化する学び、それが「自由研究」だ。中学入学後の2年間では、教科発展型の自由研究で、生徒の興味・関心を伸ばす。高校では、課題研究型の自由研究を、3年間通して取り組み、自分の興味にじっくりと向き合うことで、進路選択につなげていくことができる探究型学習だ。
高校では自由研究をより良い形で昇華するために、成果を論文にまとめる。しかし論文作成にはスキルが不可欠。そこで、中学3年の1年間をかけて取り組む授業が「学びの技」だ。テーマ設定に始まり、情報収集と選別、考察や論文の書き方などアカデミックスキルを育む。
導入として、問いの設定から論文発表までの一連の流れをダイジェスト的に学習。その後、自分の研究を実際に進めながら、図書館やオンラインデータベースの活用の仕方、スライドの作成、プレゼンの方法まで〝技〟を磨いていく。
「学びの技」では、研究する内容や仕上がりよりも探究型学習の型の育成を重視。とはいえ、それまで自由研究の経験を積んできているだけに実に多様なテーマが揃う。
ある生徒は、自分の好物であるサツマイモの水耕栽培やLED栽培について調べた。しかし、この分野は実用化の途上にあり、論文にまとめ上げるには材料不足であることが判明。そこで、人工栽培の意義を考え直した結果、海外の食糧危機を解決できる可能性があることに気づき、研究の方向を転換した。「身近な物事への興味から、最終的には視野を大きく広げた。大学で学びたいことを考える機会にもなる」と国語科の後藤芳文教諭。玉川学園の探究型学習は、大学教育にも直結しているのだ。また統計教育にも力を入れている。「論拠に統計資料を用いることがありますが、相関関係はあっても、因果関係がないこともあります。一つの統計から短絡的に結果を導いたり、主張と矛盾するデータを意図的に排除してしまったりしないように統計の手法や批判的思考の育成が大切」と後藤教諭は語る。「それだけでなく、学ぶ楽しさを感じてもらうことも目的。めまぐるしく変わる社会の波に乗っていくには、生涯を通じて学ぶ姿勢が必要。中高で育んだ学習スキルや意欲は、大人になってからの学びを支えていくはず」と後藤教諭は語る。