桐朋中学校
男子校

グループごとに発表する国語の授業
生徒の頭の中ですべての学問が総合化
独自の教育が育むリベラルな思考力
[ この記事のポイント ]
充実した国語教育で読解力と表現力をバランス良く伸ばす。
生徒主導による読解重視の授業で鑑賞力・論理的思考力をアップする。
中・高を通じた教科横断型の学びで学習意欲を引き上げる。
オリジナルのカリキュラムで 国語を体系的に学ぶことができる
自ら思考する姿勢や豊かな知性を育む桐朋の国語教育。中1で「子供の世界から」、中2は「視点・発想の広がり」、中3で「社会的な視点、生き方に関する問題へ」というテーマを設け、生徒の成長段階に応じた教材による授業を展開している。
中1では、強く共感できたり、実感を持って考えられるような問題が提起されている作品を読み解くことを通して、心でも受けとめられるような感性を育むことをめざす。その一環として行われているのが、宮沢賢治『グスコーブドリの伝記』を教材にしたグループ学習。グループごとに割り当てられた場面について生徒同士が話し合いながら作品世界への理解を深め、レジュメをつくって教員の代わりに授業を行うというユニークなスタイルだ。「自分と異なる発想も、どの観点から読み解くとその発想になるのか、意見を交換し合うことで理解できる。また他者と交わることで、発想が広がり、新たな感覚を養うこともできる。だから中1から他者という存在を意識させることを心がけています」と国語科の原口大助教諭は語る。
中2になると、社会問題を扱った作品にも挑む。例えば、ある年に取り上げられた作品は1970年代に発表された有吉佐和子のベストセラー作品『複合汚染』だ。作品の読解に留まらず、約40年前にこの作品が提起した問題は解決されたといえるのか、それともまだ課題があるのかなど、生徒自らが考え、発言させることで、世の中に対する関心を広げる。中2の国語のカリキュラムには、読書を通じて感じたこと、考えたことを作文にまとめる『文作』という授業がある。週2コマのうち、1コマは読書に当てられ、社会問題や時事問題を扱った作品を紹介して生徒の問題意識を高めるという。この取り組みは功を奏し、生徒は時事問題に興味を持って自主的に新聞を読むようになるなど、理解を深めようと努力する姿勢も養われている。
中3段階では他教科での履修内容も意識した作品を取り上げる。例えば、「公民」とリンクさせ、最高の知性派ジャーナリストといわれる深代惇郎の代表作『深代惇郎の天声人語』に触れ、社会に対する視点に磨きをかける。「他教科で学んだこと、自分が生きている今の時代を俯瞰しながら自分なりの意見を構築してもらいたい」と原口教諭。総仕上げとして「僕の天声人語」というテーマで作文を書き、自分でテーマを設定して自分なりの論点から評論や論述をまとめ上げる力を伸ばすのだ。