日本女子大学附属中学校
女子校

東京ドーム約6個分の校地にたたずむ校舎
本物に触れるからこその感動がある
〝森の中の学校〟が育む高い思考力
[ この記事のポイント ]
1. 教材は校内の森にある。豊かな心を育む理科教育。
2. 中1からのノートづくりが自発的に学ぶ姿勢を醸成。
3. 理想の学校をめざし、生徒同士で活発に意見交換。
楽しみながら 科学的思考力を身につける
春の芽吹きに初夏のまぶしい新緑。色づく秋、次の春に向けて力を蓄える冬木立。日本女子大学附属中学校は周囲を豊かな自然に囲まれた〝森の中の学校〟だ。生徒は四季折々に変わる自然の表情を間近にしながら、すこやかな日々を送る。
この恵まれた環境は生徒の精神面だけでなく、学業面でも大いに成長を促す。「教科書や資料集に頼らずとも、すぐそばで本物を見られる。キャンパス全体がフィールドワークの舞台」と語るのは、理科の大越佳子教諭。「森を歩きながら生徒に自然の営みを見せてあげられることが嬉しい。本物を見ることでしか味わえない驚きや感動を伝えていきたいと思っています」。
中1の理科は1学期間の大半が学内の森での自然観察に充てられ、様々な植物の生態を観察する。秋には再び屋外へと飛び出し、春に観察した植物のその後の変化を見る。「春先は教員側が『これを見てください、探してください』と指示した通りにしか動けないことがほとんどですが、秋には『先生、こういうものもありました』と、生徒自身が発見したものを嬉々として持ってきてくれる。春の経験があるからこそ、主体的に動けるようになる。中には私が見つけられなかったようなものもあり、子どもの視点の鋭さに驚かされます」と、大越教諭。
これ以外にも、同校の理科教育は徹底した実物主義を貫いている。中学3年間で行う実験・観察はおよそ130。なかでも中3で行われる「ニワトリの解剖」は、中学理科のハイライトだ。生徒たちの手でニワトリを解剖し、筋肉や臓器などの形態や働きを理解することが目的だ。大越教諭は「刃を入れることをためらう生徒もいる。でも実際に自分の目で見ることで、心を揺さぶる気づきがあるかもしれない。生命の尊さを知る契機になります」と語る。
実験や観察では、ポイントや手順、考察問題までを盛り込んだプリントを配付。ノートの見開きの左側にプリントを貼り、右側には板書のほか、生徒自身で調べたことをまとめるというルールを設けている。「ノートづくりは学びの基本。勉強しようと思っても、材料がなければ何もできない。テストの点数が思わしくなかったときも復習として改めてノートをつくる生徒もいる」と、大越教諭。高校では単元ごとに実験が行われるが、毎回、理科の作法にならった形でレポートを作成する。そのレベルは大学生並みだ。中学段階での地道な積み重ねがあるからこそ、高校で大きく飛躍できるのだ。