八雲学園中学校
共学校

様々な交流を通じて相手を敬う心を身につけてほしい
[ この記事のポイント ]
八雲学園中学校高等学校 理事長・校長 近藤彰郎
慶應義塾大学法学部卒業後、日本アビオトロニクス株式会社(現・日本アビオニクス株式会社)を経て八雲学園に教員として勤務。事務長を兼務後、平成7年理事長校長就任。全国私立学校審議会連合会会長、東京私立中学高等学校協会会長、全国高等学校体育連盟空手道専門部部長等、教育関係の役職に就任。空手六段。
戦前、実業家としてアメリカに暮らした本校の創立者・近藤敏男は、当時、アメリカの女性の地位が日本とは大きく異なることに驚きを感じたと言います。その頃は日本の女性に参政権はなく、学識を得る必要があるのかとまで言われていた時代でした。そうした背景を踏まえ、本学は1938年の創立以来、相手を敬う礼節の心を持ち、社会で活躍できる女性を育てるべく、一貫して女子教育を行ってきました。
近年、男女平等や協働といった考えが社会にすっかり浸透しています。こうした時代を鑑みるに、私は10代のうちから男女が理解し合い、尊敬し合うことは、大切だと感じています。
私は今こそ男子教育の重要性を問いたいのです。残念なことに、有名大学出身もしくは在学中の男子学生が女性に対して問題行為を行うといった事件が立て続けに起きています。従来の男子教育に何かが置き去りにされているのではないかと懸念しています。こうした思いもあり、本校は2018年度から男女共学化に踏み切ることにしました。これまでの女子教育の中でも他者を尊敬する気持ちを持ち、良好な関係を築くことの大切さを説いてきましたが、共学化により、男女間でもこれを広げていきたいと思っています。
また本校は国際的センスを培う教育にも注力しており、戦後、GHQの将校夫人たちによる支援で再開した伝統の英語教育を始め、アメリカのサンタバーバラに校外教育センター「八雲レジデンス」を開設しています。日々の学校生活で育まれる相互理解や他者への尊敬の精神は、人種間や国際間でも大いに発揮されることでしょう。
その力試しの機会は豊富にあります。中3では全員参加のアメリカ海外研修、高1で希望者を対象とした9カ月プログラムを実施。さらに本校は世界50ヵ国の私学180校が所属する国際私立学校連盟「ラウンドスクエア」に加盟しています。加盟校同士であれば自由に交流できるとあって、様々な国の若者とつながるチャンスがあります。これ以外にも、アイビーリーグの名門イェール大学の女性コーラスグループのメンバーを招いた交流の場も設けており、今年で5回目となります。生徒には、ぜひ世界に目を向けてほしいと思っています。
こうした多岐にわたる交流のベースになるのは、日頃の英語教育のほか、本校独自の感性教育です。中学では月に一度、文化体験の日を設け、美術や能楽、バレエやミュージカルといった芸術鑑賞をはじめ、あらゆる文化に触れています。例えば、日本の伝統文化を知っておけば、海外の人と交流したときに互いの国の文化を紹介し合えますし、これを機に相互理解にもつながっていくはずです。若いうちに心に蒔いた種が開花する瞬間です。
もう一つ、心を育てる取り組みとして、中1・2では武道教育として空手を必修としています。空手の基本は技よりも礼儀作法にあります。日本人が脈々と受け継いできた精神性や礼節を学ぶことができる非常に日本らしい武道といえるでしょう。空手もまた、文化を体感できる機会の一つです。
人と出会う。海外に目を向ける。あらゆる文化と触れ合う。ぜひ10代の多感な時期に、様々な体験を積んだり、興味のあることに積極的にチャレンジしてほしいと思っています。選択肢は多ければ多いほどに人生は豊かになりますから。能力が及ばないなどと感じる必要は全くありません。心から興味の持てることがあれば、努力でカバーできるものです。そのためのしなやかな心を、本校の6年間で育んでほしいと思います。