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和洋九段女子中学校
女子校

互いの意見を尊重する教育が学校を元気にする
[ この記事のポイント ]
和洋九段女子中学校 校長 中込 真
上智大学理工学部卒業後、東京理科大にて専修免許を取得。平成28年に和洋九段女子中学校高等学校校長に就任。化学の教科書、参考書の執筆のほか,日本化学会の各委員会で委員を務めた。東京都理化教育研究会より協会賞,功労賞,日本化学会より化学教育有功賞を受賞。上智大学理工学部で理科教育法の非常勤講師も兼務。
今年、創立120周年を迎えた本校は、改革の最中にあります。まず、今年度からすべての教科でPBL型授業(Problem Based Leaning)、すなわち相互通行型授業を導入しました。同時に1人1台のタブレットを使って、コンピュータリテラシーを含むICT教育も進めています。それからグローバルクラスを新設したことにより、帰国生や英語学習に意欲的な生徒など、これまでの本校のカラーとは違うタイプの生徒が入学しました。新1年生は制服のデザインも一新し、スクールバッグも両手がふさがらないリュックサックタイプのもとなり、清新で自由な印象を与えています。
PBL型授業は、教員がトリガーとなる質問を投げかけ、生徒はその問題を解決するために情報収集を行い、考えをまとめ、グループでのブレインストーミングを経て、個々の意見の中からグループとしての意見を選択し、発表するという流れで行います。教員のファシリテーターとしての技量が肝となるため、一昨年の夏休みに全員が1週間のPBL授業研修を受け、来たる17年度に実施する自身の授業を、時間をかけて練り上げました。
PBL型授業においては他者の意見について批判は禁止し、互いの意見を尊重し合うこと。意見の発表に対しては、必ず拍手することを徹底させました。すると、生徒や教員に変化が起こりました。PBL型授業の導入以降、教員は生徒に相対するとき、授業でそうするように、否定から入らず、生徒の意見を聞き、解決策を導いていくようになりました。すると、生徒も教員に自分の意見を言うことを恐れなくなりました。ここに、積極的なグローバルクラスの生徒も加わって、学校全体の空気が変化し、短期間で見違えるほど活性化したのです。
将来、本校の生徒たちがグローバル社会で輝くために必要なのは、正解のない世界で、論理と熱意をもって問題に取り組み、他者と協調しながら、よりよい方向を見出せる力です。6年間の学校生活の中で、その力を身につけて、社会や家庭に貢献できる人材になってほしい、それが私たちの教育の目標です。本校を改革するにあたり、私が校長として教員に指示したのは、「例年通りという言葉を使わない」ということでした。ダーウィンは『進化論』の中で、生き残るものは、強いものでも、賢いものでもない。変化できるものだけだ」と述べています。教員も生徒も、変化を恐れず、むしろ楽しんでほしいと考えていますし、短期間にこれだけの変化が起こり、学校が元気になったことは、嬉しい驚きです。
今年度、新しい取り組みの一つとして、中1の5月にブリティッシュヒルズの研修を行いました。本校の場合、初期の段階でインパクトを与え、英語でコミュニケーションを取ることの楽しさや喜びを知ってもらおうと、この時期に設定しました。海外研修についても、従来のオーストラリア研修に加え、昨年からオプションとしてニューヨークやマルタ島を加えました。そのほかの地域も開拓を進めています。また、グローバルの芽をどこで育てるかを勘案した結果、中3でシンガポール研修を実施することにしました。
本校の改革についてお話してきましたが、それは伝統を排除するのと同義ではありません。礼法、茶道、華道のほか、日本を深く理解するための国内研修も設定しています。革新と伝統のハイブリッド教育が、伝統校の望ましい姿だと思っています。