女子聖学院中学校
女子校

社会に目を向け英語で思考する授業を展開
英語授業の中でグローバル教育を実現
社会問題に向き合う深い思考力を育む
[ この記事のポイント ]
社会問題に向き合うグローバル教育で心の成長を促す。
能動的に英語学習に向き合う姿勢を養う教育。
卒業後の社会を見据え、取り組む充実したICT教育。
独自の授業サイクルで グローバル教育を推進
女子聖学院では日常の英語授業の中でグローバル教育を行う。そのベースはSDGsと繋がるものがある。SDGsとは持続可能な社会の実現をめざすために国連が掲げた17の目標を指し、世界の「誰一人取り残さない」ことを誓うもので、同校のキリスト教精神の理念とも一致する。グローバル教育のキーワードは〈幸せ・豊かさ・公正・平和・居場所・共に生きる・参加〉7つ。英語科の加納由美子教諭は「生きていく上での本当の意味での幸せ・豊かさ・公平・平和について一緒に考えていく」と語る。また〈居場所・共に生きる〉については、授業の場に生徒自身の居場所があり、他者にも居場所を提供することの意義を知り、共に生きる真意を体感させる。「これは個々の安心感に繋がる。生徒たちは安心感を得て初めて社会への〈参加〉に取り組める」という。用いる教科書は、実践的英語力をアップさせていくために短い本文でありながら文法・単語的必要項目を網羅し、内容的にもグローバルな社会問題を数多く扱う『アクティブ・リーディング』。また授業では〈①読みたいと思わせるイントロ→②知識・内容をインプット→③教科書の内容や単語を頭に残すインテイク→④内容を深めるジャンプ→⑤調査・発表を行うアウトプット〉というサイクルを重視。特に注力するのが④と⑤で、これらは「英語を使いたい」「調べてみたい」「自分の意見を伝えたい」と能動的な行動を導き出す動機づけとなる。
『点字教育』の項を例に授業の流れを紹介すると、まずは筆者の主張を探す。ここでは視覚障がいを抱える人は幼い頃より点字教育を行うべき、というのが筆者の主張だ。次に生徒に「視覚障がい者の何割が点字を習得しているか」という問いかけを行うと、「7~9割」という意見が多い。しかし実際は1割程度という事実を提示することで、生徒には視覚障がい者の人たちはどのように読み書きを行っているのかという疑問が生じる。そこから議論を重ね、身近なスマホを例に挙げ、音声入出力といったアクセシビリティ機能など視覚障がい者を意識して作られた発明が、実はすべての人を幸せに導くものであり、それらをユニバーサルデザインと総称することを解説する。その後、生徒自身で身近なユニバーサルデザインを調査し、発表するという流れだ。自分で調査し、発表、アウトプットすることが前述の④⑤にあたり、生徒の興味関心をさらに広げる。その広がりは、大学入試問題や長い英文を読む際の背景知識となり、より深く読み解くことにも繋がっていくのだ。
また、短いながらも論理展開が明確な教科書の熟読は、プレゼンやスピーチコンテストの高い目標にもなる。さらに4技能はもちろん英検にも注力し、高3で複数の1級合格者も輩出している。
こうしたグローバル教育、独自の学習展開は、社会の出来事を自分事として思考する姿勢を育む。キリスト教精神とともに「誰一人取り残さない」「共に生きる」ことを大切に考える授業は、生徒の心を着実に成長させている。