女子美術大学付属中学校
女子校

中1数学の冬休みの課題で作る多面体は美術作品
〝すべての教科は美術につながる〟
数学授業からも見える女子美教育の魅力
[ この記事のポイント ]
IT企業も重視する「STEAM教育」で、受験生が増加傾向に。
全員受験の数学検定は、ほとんどの生徒が目標級に合格。
夏期講座や補習も万全。数学の得意な子は「もっと数学!」講座に参加。
数学入試の図形問題では 美術的センスも評価
近年、女子美の受験者数は増加し、学校説明会への参加者も増え続けている。その理由の一つとして挙げられるのが、何もないところから新しいものを生み出す「美術」を軸とした教育だ。世界で注目される「STEAM教育」においても、Art(芸術)を基盤としたデザイン思考を持つ人材の育成が急がれている。ITや人工知能(AI)が進化する次の時代には、これまで重視されてきた積み上げ型の知識よりも、柔軟な発想力や創造性、表現力、感性などの「美術的センス」が高く評価される時代になりつつあるのだ。
こうした美術的センスを持つ子どもを発掘するため、同校の数学の入試では、図形問題にも工夫を凝らす。「例えば、ある年度の体積と表面積を求める問題では、図形が草花のような形をしています。マス目の一つ一つを計算すると時間がかかりますが、図形全体を草花の形として俯瞰することができれば、早く正解にたどりつくことができます。採点時には、こうした美術的センスを持つ子どもをなるべく見逃さないようにしています」と数学科の髙城史子教諭は話す。
入学後は、教科書を中心にした授業で基礎を固め、週2、3回、小テストを行って知識の定着をはかる。小テストをまとめたファイルの表紙には、生徒自身が好きな絵を描くのが女子美流。小テストで数学が苦手な子を早い段階で見つけ、放課後や夏休みの補習できめ細やかにフォローしている。そして昨年度からは「数検」を学年全体で受験。ほとんどの生徒が学年ごとの目標級に合格するなど、学力アップの底上げに大きな効果を挙げている。
数学が得意な子には、髙城教諭主宰の「もっと数学!」講座を開講。中1~高3生が学年横断で参加している。ひたすら問題を解くことによって、「数学が好き」から「数学が得意」へと変化していくという。
さらに美術系学校ならではの取り組みとしてユニークなのが、中1の冬休みの課題で出される、折り紙で作る多面体だ。「作り方を教えているわけではありませんが、生徒たちは自分なりに工夫し、パーツを幾重にも組み合わせた美しい多面体を仕上げてきます。美術作品のような多面体をここまで複雑化させて作り上げるのは、女子美生ならではといえるのではないでしょうか」(髙城教諭)。これらの作品は、クラス発表で共有するなど、数学の授業が彼女たちの士気を高める美術作品のプレゼンテーションの場にもなっているのだ。