インタビュー

<すばらしい科学の世界>
「チバニアン(千葉時代)」から見る「地学」の魅力とその社会的重要性

更新日 : 2018/09/03

【岡田誠 茨城大学教授】
1987年静岡大学理学部卒業、1992年東京大学大学院博士課程修了。博士(理学)。
1993年茨城大学理学部助手。助教授、准教授を経て、2015年より現職。

理系志望の受験生のうち、「地学」を選択する生徒はほとんどいないだろう。理由は、入試で「地学」を選択できるところが少ないこと、大学で「地学」を学べるところが少ないことなどがあげられる。だが、世界有数の地震国である日本において、「地学」は重要な学問であり、日本の研究は今、世界中から注目されている。

チバニアンをめぐるエキサイティングな戦い

田中舘 千葉県市原市田淵の養老川沿いの地層を基準地(GSSP)として国際地質学連合( IUGS)に申請、約77万年~12万6000年前の年代を、ラテン語で「千葉時代」を意味する「チバニアン」と命名・提唱し、これが有力になったという報道が話題を集めました。

岡田 現時点で正式に決まったわけではありませんが、非常に有利になっています。地球は過去360万年の間に、少なくとも15回、地磁気の逆転しているのですが、最後の逆転が今から77万年前で、その証拠が千葉の地層に記録されているのです。私たちはチームを組み、その証拠を多角的かつ丁寧に集めていくことで、「イオニアン」の年代名を提唱していたライバルのイタリアチームを制することができました。ただ、「イオニアン」の名前は先行して欧米の学界などですでに使われていますので、その実績を覆して「チバニアン」を浸透させるのは、今後の課題でしょう。

田中舘 決まれば、日本初のGSSPとなります。日本のチームはどんなメンバーで構成されているのですか。

岡田 日本の研究者チームは茨城大学、千葉大学、国立極地研究所、国立科学博物館など22機関、32名で構成されています。私は古磁気楽と古海洋学の専門家ですが、データをより充実させるために、微化石や花粉など、それぞれの分野から現場で能動的に動ける30代~40代前半の若い研究者を募りいつの間にか大所帯になりました。ちなみにイタリアでは南部のモンタルバーノ・イオニコとヴァレ・ディ・マンケの2カ所の候補地で動いていて、それぞれの研究チームはもっと小規模なものです。

田中舘 IUGSでは、15人の審査委員から11票を得る圧勝だったと聞いています。イタリアに勝てた理由は何ですか。

岡田 約3400万年前より後の年代名は、これまでイタリアが大半を命名しています。日本が命名できるのは最初で最後のチャンスと思い、取り組みました。房総半島は外洋に面しており、地層は深海環境で連続的に形成された堆積物でできています。私は三十数年前からこの地層でいい記録が取れることに着目していました。GSSPに選ばれるためには、他にもアクセスしやすいことや、見やすいことなどの条件がありますが、これもクリアできる。もちろん、イタリアの研究にもいい部分もありました。そこで、イタリアにあって日本にはないデータを徹底的に無くすという戦略を立ててチームを組んだのです。これまで研究者としては経験したことのない、ゴールをめざしてのレースのような、非常にエキサイティングな戦いでした。

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